遥かなる佐世保 3日目 その①

8月12日 快晴 走行距離353km

 

AM6:30 起床。

 

清々しい朝だった。

カーテンから薄く差し込む鮮烈な光が、今日の快晴を予感させてくれる。宿がとれないあまりの恐怖で震える手も今はない。体力も十分だ。今日は間違いなく目的地へ到達できるだろう。

とうとう九州に来た────

今回のメイン・イベントである佐世保。その1日を最高のものにしてくれるパズルのピースの1つ、天気がまずは微笑んでいるのだ。控えめに言って最高になることは間違いあるまい。

それにしても────

シモンズは素晴らしい。寝起きも全くコンフォートである。昨日の疲れも大分軽くなったようだ。ユニットバスを往復するフットワークも軽い。

・・・行ける。今日はとことん行ける。神奈川からおよそ1300km、あの日見た景色を結実の物としようではないか。

 

軽く顔を洗い、ベッドの上で全日本道路地図を広げる。なんかこれいらなかったんじゃズシリと重い。

ここまでかなりの距離を走ってきたが、そもそも旅はまだ折り返し地点でもないのだ。食い倒れの大阪、京都の寺巡り、ナガ●マスパーランド、ユニ●ーサルスタ●オジャパン・・・

時間なくて全然寄れなかっ数々の甘い誘惑を振り切り、ついに足を踏み入れた九州。

思い返してみれば感慨深いものがある。私はついに九州の地にこの足愛車と共に辿り着いたのだ。

そう、あの日見た某レンタカーのCM、そこで聞いた「行こう!展海峰!」。

そのたった1フレーズが、今回の旅のきっかけだった。ただそれだけで人は西へと駆り立てられるのである。

CMの影響力を今一度、身を以て再認識させられた朝であった。

 

 

佐世保 004

 

早速ホテルを出た。とても静かだ。

もうまったくこれ以上ないくらい朝である。現在時刻、7:02。旅人の朝はいつも早い。

人気のない街はとても清々しい雰囲気で好きだ。閑散とした街を歩くと靴音が響く。朝だけがもつ、独特の時間である。

いつの間にか少しずつお土産も増え、積載なくなってきたズシリと重みを増していくシートバッグ。北海道、沖縄を共に旅したフルフェイスは歴戦の傷だらけだ。パーツも欠けている。

駐輪場までのわずかな道のりの中で、これから出会う様々なイベントを予感させてくれるような期待がじわり、じわりと静かに高まっていく。

 

────佐世保。

 

そう、今日は自分の足で佐世保へと向かうのだ。3日目にしてついに、真の佐世保おじさんとなるのである。30半ばにしてワクワクがとまらない。

この先に佐世保バーガー、トルコライス、長崎ちゃんぽんが私を待っているのだ。

遠慮はいらない、食欲の時間だ先を急ごう。今日のスケジュールはタイトそのもの。佐世保をどれだけ周れるかは、これからの迅速な行動にかかっているのである。

しかしながら行先は自由だ。佐世保近辺をぐるぐるとまわり、そしてあの場所へ向かおう。

あの日聞いたあのフレーズを、今こそ高らかに叫ぼう。

 

 

行こう、展海峰!(小声)

 

 

 

佐世保 003

 

駐輪場についた。

やはり朝だ。まったく人気がない。・・・・・・これ出れるのか?

恐る恐る入ってみる。入口が施錠されてるかと思ったが、どうやら清算後に自動で開くようだ。一安心である。

 

 

佐世保 002

 

荷物を積み込み、カメラをセット。数分で準備完了だ。いつでも飛び出せる。

今回ずっと動画も撮ってはいるが、基本的に寄り道が少ないのですごく高速道路紹介動画になってしまっているという現実が直視できない。ああどうしよう編集。道路標識の博覧会にするか。

 

と、それはさておき。

 

今日もよろしくな、タイガー。

念願の佐世保はもうすぐだ。今日こそ展海峰へ行く。俺をあの場所へ運んでくれ。そして共に美しいリアス式海岸を、展望台から共に拝もうじゃないか相棒。

 

 

 

佐世保 001

↑西九州自動車道へ入った。朝は閑散としている。

 

 

九州自動車道から長崎自動車道、そして西九州自動車道へ。

道は佐世保へと入った。期待が背中をグングン押してくる。ハンドルから伝わる止まらない鼓動が自分のものとシンクロする。

 

それにしても相変わらず高速に乗るまでが長い・・・

大抵「え、マジで?ほんとにこっち?(震え声)」と疑心暗鬼になりながら進むとゲートが出てくるのだが、そのコースに入るまでが方向音痴の辛く苦しいところである。全日本道路地図も重い。ナビを搭載する日も近いのだろうか。

 

そして道は長崎、佐世保へ。

車線の少ない高速道路を流れにのって走っていくと、何やら左右を山に挟まれた山間の道が続き始めた。

 

その瞬間である。

 

その時の景色が、1年近く経った今でも瞼に焼き付いている。

緩いカーブを抜けた先で唐突に飛び込んできた街の景色。歓声、そして思わず口をついて出た「ここに住みたい・・・!」

左右を山に囲まれ、中央の軍港らしき港には無数の船。

なだらかな山の稜線には住宅が点在し、まるで小国のように独特の景観を形作っていた。

そう。

視界が開けたその瞬間、私は佐世保に心を奪われたのだ。

 

 

 

 

 

高速を降り、佐世保の市街に入る。

すると唐突に街に入ってしまった。左右の分岐に直面する。いきなり現れた生活道路に選択肢を迫られる。うーん、とりあえず左?

それにしても急に街に入ったのでどこに行って良いのか全くわからない←

 

おそらく主要であろう国道を走っていると、チラチラと商店街のようなアーケードが見える。おおっ、ちょっと行ってみたい。佐世保の街散策は外せない。

ゆるゆると走りながら駐輪場を探すも、これがなかなか見つからない。この先がどこにつながっているのか全く分からない。このままじゃ道に迷いそうだ。

思い切って商店街に突っ込んでみると、幸いにもバイクを停められそうな場所が見つかったのでそのまま駐車。

先ほどから視界に入る佐世保バーガーのお店を横目に、まずは商店街に繰り出すことにしよう。

 

 

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アーケード街である。雨の日も安心だ。

このアーケード街がもの凄く長い。端から端まで見えないくらいずっと続いているようだ。佐世保凄ぇ。

ちょうど真ん中あたりに侵入したので、とりあえず思うままに歩いてみる。

 

 

・・・なんだろう、懐かしさというか、こう、ゆったりした空気を感じる。まるで母方の実家がある松山の駅前のように、ここは言葉にできないゆるい雰囲気で満たされているのだ。

まるで夏休みの間だけ母方の実家に預けられた、ぼ●のなつや●みのボク君になったような気持ちである。おじさんに捕まらないように移動しなければ。釣竿と虫取り網はどこだ。

商店街を見たいだけで特に買う物もないのだが、通りに並ぶ店を見ながら歩いているとじわじわ佐世保に来た事を実感する。

 

時刻は11時を周った。

あれっ?ちょっとまって、小倉から佐世保まで4時間もうすぐ昼時か。しかし今日の飯は出発前からすでに決まっている。地元の名物を食べずしてツーリングは完成しない。

そう、佐世保と言えば佐世保バーガー。そして噂のトルコライスが私を手ぐすね引いて待っているのだ。回転ずしで4皿な俺氏、胃袋の限界に挑もうではないか。

しかしながら宿と同様にお店のリサーチも全くしていないので、とりあえず見つけた店に入ることにする。

 

そういえば動画撮影用のSDカードがちょうどメモリ一杯になっていたので、見かけた電気店で予備を購入。

レジで思いついて、展海峰までの道を尋ねてみた。

 

あれ?全日本道路地図どこいったもちろん現在地も行き方も、ポケットの情報端末で調べることができる。

それどころか佐世保までスマホがなければたどり着けなかったであろう。まったく恐ろしい機械だ。

そんな情報化社会まっただ中ではあるが、スマホやらナビやらでなんでもかんでも調べるよりも、地元の人に聞くのがやはり旅の醍醐味であろうと思うのだ。

このポケットの何でもできてしまうド●え●んのような21世紀の恐ろしい端末によって、必要最低限の会話のみで1週間過ごすことも可能だが…………

 

しかし────

 

考えてみてほしい。

ただ走り、食べ、見て眠るだけの旅と。様々な人々と会話し、自分の知りえなかった情報から新しい楽しさと出会える旅。

どちらが充実した旅になるだろうか────

もちろん、旅のスタイルは様々だ。一人の時間を大切にする旅もまた、一つの形であろう。

大切なのはいかにして自分が楽しく旅をするか、それに尽きる。旅は自由だ。

昔はガチガチに計画し、ルートも決め、極力誰とも触れ合わずに旅をしていた自分。

しかし気が付けばいつの間にか無計画・無謀な旅行に魅力を感じてしまっていた。行く先々でハプニング大賞を探している。

まったく面倒なおっさんになってしまっその土地の人々との触れ合いも旅にかかせないピースであり、失敗も、恥も、出会いも、ネットには無い生きた情報までも手に入るこの喜びが、より濃厚な旅への切符となるのだ。

私はそれに憑りつかれてしまったようだ。

 

 

「展海峰ですか?バイクなら30分かかんないと思いますよ」

「近ぁっ!」

 

 

 

 

 

生きた情報を手に入れた私は昼飯を探すことにした。

気が付けば12時が近い。今日はまだ何も食べていないのでお腹もゲットレディである。もうずっとフューエルタンクがガソリンを所望している。そして本日のガソリンは勿論───

佐世保バーガーはどこだ?

見渡すとこのアーケード街にもたくさんあるようではあるが、実は1件のお店がさっきから心にひっかかっている。

佐世保に入り、高速を降りた所に佐世保バーガーのお店があったのだが、そこにバイクがめちゃくちゃ停まっていたのだ。

ライダーが集まるお店────そう、私も紛うことなきライダーのはしくれ、フロム神奈川。

気になって仕方がない。あれは有名な店なのだろうか。いや、きっとそうに違いない。バイクめちゃ停まってたし、行列もできていたし、並んでまで食べたいのならそれはきっと絶対有名なお店なのだろう。まるで湘南のと●っちょのように────まったく、結局自分もミーハー根性丸出しなのである。

 

 

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ついた。

凄い行列だ。半端ない。お盆まっただ中である。暑い。汗がしたたり落ちる。こいつはヤバイ。

どうしよう、並ぶべきか・・・とりあえずライダースを脱いでカメラを外し、列に加わってみる。

既に並んでいる人々の会話に耳を傾けるとなんとまぁ1時間待ち。ここで1時間とな・・・!

 

佐世保滞在の貴重な時間が────・・・・・

 

いやまて。冷静になるんだ。よく考えよう。

佐世保バーガーを食べる。この行為は佐世保に来て絶対にはずせない目的の1つだ。そしてそれは味、話題ももちろんはずせない。

入口周りを見てみる。

・・・雑誌、テレビに取材された的なビラが所狭しと貼られている。そして顔出し看板。芸能関係の香りがプンプンだ。味はわからない。しかしここまで来て入らないのは嘘であろう。よし、心は決まった。

 

 

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顔を出し・・・あ、いや、今日はやめておこう。

 

 

本当に1時間くらい待って、カウンター席に案内された。

店内はアメリカンというかカントリー調のつくりで、店員はカウボーイのようないでたちをしている。うん?佐世保バーガーってアメリカンな感じだっけ?

どうやら最初にレジで購入するシステムらしい。メニューを見る。

複数種類があったが、スタンダードな佐世保バーガーをチョイス。初心者はやはりスタンダードであろう。

 

案内された椅子に座る。カウンターの向こうで多くのスタッフさんが鉄板の上で無数のバーガーを忙しなく作っている。並んでいて思ったが、文字通りフル回転である。動きが機敏だ。ここはカウボーイの戦場か。

程なくして注文の品が運ばれてきた。

 

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おわかりいただけるだろうか、このデカさ。コーラのグラスが見えない。

想像はしていたが凄いボリュームだ。お腹が空っぽとはいえ自分の容量は寿司4皿。これからの展開に胃袋がおののいている。

食べ方があるらしいので、それにならってまずはバーガーをつぶしてみる。

 

・・・大きすぎてつぶれない←

 

無理やり行こうとすると卵が逃げる。おいおい。なんだこれは。どうしろっていうんだ一体。ちょっと君、このままかぶりつくのかい?いや顎外れるってこれ。HAHAHA。

仕方なく少しずつ齧ってみる。おちょぼ口である。・・・おおっ、旨い!

なんというかお肉がうまい。Mのマークで有名なお店のビッ●マックが強化された感じだ。なるほど、これが佐世保バーガーか。

お腹もすいていたが、それよりも炎天下の中で並んでいる人に申し訳ないので一生懸命食べる。

半分くらい食べてドリンクが空になった。ドリンクバーらしいので、お代わりを注ぎに行くことにする。

 

 

そして事件は起こった────

 

 

コーラをたっぷり入れて戻ったその時である。

自分の席にあった筈の、半分食べかけのバーガーが綺麗に消えていた。………はい?

一瞬席を間違ったかと思ったが、そんなことはない。隣の仲がよさそうな父子の左隣、間違いない、ここだ。しかしバーガーが消失している。どういうことだ。

時間にして1分かそこらでバーガーが消えた。一瞬なにが起こったか脳が追い付かずにありのまま今起こったことを話そうとしてしまったが、焦ってはいけない。

まずは状況確認をしていこう。

 

「あの、すみません・・・えっと、ここにあったハンバーガーなんですが」

「あっ、すみません!もしかして食べ途中でしたか?片づけちゃいました」

 

 

(  д )   ゚ ゚

 

 

結構お腹いっぱいだったし、まぁいいか硬直しているとスタッフさんが「これ新しいのです!すみません!食べて下さい」出来立てのハンバーガーが目の前に置かれた。

 

 

(  д )       ゚ ゚

 

 

平静を装いコーラを口に運ぶ。グラスを持つ手が震えていた。歯にあたってカチカチ鳴る。一発目からのフードファイト。いきなりクライマックスだ。佐世保バーガーまさかの1個半。寿司にして何皿になるであろうか。10皿くらいか?あまりの事態に数えきれない。

「実はもうさっきのでお腹がいっぱいなんで、えーっと、テイクアウトで!」なんて言えたらどんなに良いであろうか。

なんということだ。佐世保の力を侮っていた。「残りの半分はコーラで流し込むしかねぇこの1個くらいなら何とかなるなー」とか思っていたら1個じゃなかった。1個半だった。胃袋が足りない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

隣の父子が笑顔でごちそう様している。カウンターのメンツが次々に回転する中で1人、振り出しに戻って真顔。今一度「テイクアウトプリーズ」が巨大なバンズと一緒に喉元まで出かかる。ははっ、すっげぇ!オラ何だかワクワクしてきたぞ!(震え声)

 

 

 

 

 

 

食事開始から25分。コーラを駆使して完食……いや、違う、訂正しよう。これは食べたんじゃない。流し込んだの(ry

本場の佐世保バーガー、満喫いたしました。

えっ?トルコライスですか?明日になれば食べられる気がします(震え声)

 

 

佐世保 005

 

 

折角なのでお店をバックに1枚。

うまかった。参った。お腹も完全に限界だ←

後に調べたところ、ここログキットさんは最初に佐世保バーガーを出した?お店みたい。

なるほど、そんな歴史あるお店で1個半。ちょっと長居はしたが、これ以上のネタはあるまい(瀕死)

 

 

 

時刻はもうすぐ1時。さあ、昼飯を食べたら行く先は1つだ。

展海峰────

快晴、そして昼下がり。状況は申し分ない。出来上がっている。

今から30分後に、今回の旅の目的地に到着する。

液晶で見たあの美しい景色は、いったい自分のこの目にどう映るのであろうか────

 

 

 

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ついた。

時刻は13:10。本当にめちゃ近かった。佐世保に住んでたらめっちゃ来るんだろうか。

お盆まっただ中なのに駐車場はガラガラ。人気があまりない。おお?

観光地としてはあまり人気がないのであろうか。

 

 

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バイクを停めてふと見ると、なぜか敷地の端にヤギがいた。

なんでこんなところに・・・どうやら飼われているような雰囲気だ。

くつろいでいる。

 

 

佐世保 006

 

 

ヤギである。

近づいてもあまり怖がるそぶりはない。人に慣れているようだ。

へぇぇ、ヤギってこんな風に座るんだなぁ。

近くで見るとリアルだが、愛嬌があって可愛い。

 

 

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駐車場から坂を上がっていくと、すぐに展望台が現れた。ここを上がれば件のリアス式海岸、九十九島が見えるのだろう。

自分を突き動かしたCMのワンシーンはここで撮影されたのだ。「行こう!展海峰!」あの掛け声がよみがえる。

 

神奈川から片道1300km。そう、ついにここまで来たのだ。

「ちょっとその辺走ってくる」的なノリで西に向かってひた走り、宿も何も無計画。そもそも飛行機で良かったんじゃこの景色を見たいがために爆走した2日半。それが今、ここで完成する。

さぁ行くぞ。今や私を遮るものは何もない。これから目にする景色への期待を胸に、階段をゆっくりとあがった。

 

 

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静かな空気の中、海風がつきぬける。

空と海の境は霧の向こうに。見渡す限りの大小様々な島々が、ただ静かにそこに佇んでいた。

全く凄い眺めだ────

思わず止めていた呼吸に気づき、深く長い息を吐く。

そこにあるのは海と島。ただそれだけだった。ただそれだけが、圧倒的スケールで胸に迫ってくる。生まれて初めて目にするリアス式海岸は、想像以上の存在感を持っていた。

 

静かな展望台だった。聞こえてくるのは風に揺れる木々の音のみ。

ここへ来るまでの道中も、山間の静かな道だった。

忙しさも、都会の喧騒も、ここには無縁だった。街全体がゆるく、のんびりとした空気に包まれているような感覚────

改めて住みたい、そんな風に思う。

 

 

佐世保 007

 

展望台の下に降りてみる。

ここからの眺めも綺麗だ。視界いっぱいに広がる島々。夢中になってシャッターを切るも、やはりこの場に立って見るこの景色には敵わないと感じた。

来て良かった────

海風を受けながら、ただ静かに感動をかみしめる。

先端の柵に「展海峰」と書かれているのをみると、もしかしたら展望台は後から建てられたものなのかもしれない。

 

 

ところでこのリアス式海岸、九十九島はいくつもの展望台があるらしい。

ここ展海峰もその中の1つで、とするならば他の展望台に行かない手はあるまい。北海道は摩周湖の展望台のように、見る角度によってまた違う景色を見せてくれるのだ。

現在時刻は13:28。

行こう、次の景色が待っている。

 

 

 

 

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ついた。

走り出して間もなく砂利の駐車場に入った。近い。そしてやはり人が居ない。

なぜだ。佐世保観光は皆もっと違う場所に行くのだろうか。やっぱりハウステンボスとか行って乗り物乗ったり美味しいもの食べたりするのだろうか。LEDきらめくライトアップでキャッキャウフフするのだろうか。

べっ、別に羨ましくなんかな時間があれば自分も長崎ぶ●ぶら節を慣行していた。それこそバイカーがあこがれる天草へも足を伸ばしていたであろう。そう、これは優先順位の問題なのだ。色々とそぎ落とされた結果なのだ(涙目)

ここ石岳展望台は知らなかったのだが、映画・ラストサムライのロケ地にもなったらしい。

 

ラストサムライ────?

 

思わずはっとする。

……そうか。そういうことか。なるほど、この符号────

遥か神奈川から愛馬(注:鉄製)にまたがり無謀にも単身切り込んできた自分は、平成のサムライと呼んでも差し支えないのではないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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では行くでござる←

 

佐世保 008

 

 

はてさてこの石岳展望台、想像以上に険しい道でござった。

まるで岩場を削りだしたような荒い岩と砂利の道がなかなかどうして急坂を作り上げており、拙者デスクワークが主な任務ゆえ足元がおぼつかないでござそうろう(錯乱)

しかし安心めされい、某はサムライ。この程度の岩場で音を上げる程やわではないのでござる(胃を押さえながら)

 

 

 

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良くよく考えてみれば佐世保バーガー1個半からまだ1時間程度。消化とか全然そんな感じじゃなかった。トルコライス出そうああ、今日もいろ●すがうまい。

息を切らして上がっていくと、少し視界が開けた場所にでた。九十九島が再びこんにちはである。

どうやらここがラストサムライのロケ地らしい。(←看板が建っています)

先ほどの展海峰よりも島が近くに感じる。眼下には港町も見え、佐世保という街の素朴でのどかな雰囲気を近くに感じる。

 

 

 

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さらに進むと石造りの展望台が見えてきた。どうやらここが石岳展望台らしい。オリンポス神殿かと思った。とても立派なつくりだ。

らせん状の階段を上がっていくと、風通しの良い展望台に到着する。

 

 

 

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おお・・・ここからの眺めも素晴らしい。ぐるりと見渡し、シャッターを切る。

少し陽が陰ってきたのもあってか、九十九島が先ほどよりも色濃く感じられる。

しばし風に吹かれながら名何となく端に立っている地図を見る。

 

 

ん?

 

 

「神崎鼻公園」という所に「日本本土最西端」の碑があるようだ。

日本本土最西端───?

 

 

日本最北端、宗谷岬。日本最東端、納沙布岬。そして日本国道最高所、渋峠───

今まで訪れた石碑を振り返る。

つまり残るは西と南、その内の一つが今、目の前にある……?

 

 

時刻は2時を大きく周った。小倉から走ってきた道のりを考えると、そろそろ・・・いや、夕方には戻らなければ帰りの行程が怪しくなってくる。真夜中の行軍まっしぐらである。

しかし今いるのは念願の佐世保。そう、佐世保なのだ。

バーガー食べて展望台登って、それで帰るの?

 

 

 

 

 

 

 

 

心は決まった。そう、武士は行かねばならん。

そこに日本の最西端がある。行かねばならん。

 

 

地図から察するに、およそ20kmくらいで行けそうな距離である。近い。

16時に着けばとりあえずは帰れる計算だ。道も海沿い、迷うことはないだろう。

 

 

 

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ちょっと迷っついた。

誰もいない。というかさっきから行く場所、どこも人がいないのはなぜだ。

あれっ?長崎観光間違っちゃった?

 

 

 

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日本本土最西端、到達でござる←

 

 

もうすぐ夕日が始まる。ラスト・サムライになれるかもしれない。

誰もいないのを良いことに写真を撮りまくる。そう、自撮りである。とてもじゃないがここには掲載できないあられもないポーズもした。いっぱいした。だって神奈川から走って来たんだぜよ?ライダーズ・ハイというやつのせいでござる。

インスタ●ラムはやっていない、ツイッ●ーは何年も放置。

しかし写真を撮るのはここに来た証を残すためである。

「行こう!展海峰!」から始まったこの無茶ぶり旅が、気が付けば日本の最西端に来てしまった。

宿も取らず、何も調べず、その日その日で行先を決めるだけのロングツーリング。

ノリと勢いで進むこの姿はまさしくペパ・・・あ、いや、こっちの話である。

 

 

 

佐世保 15

 

 

 

いっぱい撮ってたら16時半すぎてた。

 

 

つづく

 

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