看板を制作するとき、デザインや種類、インパクトの有無が気になりますが、制作したあとの耐用年数や寿命、定期メンテナンスについても考えなければなりません。
看板は通行人やドライバーから目に付くところに設置するだけに、安全性も重要なポイントになるからです。
看板の耐用年数と看板寿命との関係、定期メンテナンスの必要性について解説していくので、これから看板を制作する方をはじめ設置してからしばらく経つ方もぜひチェックしてみてください。
看板の耐用年数は看板寿命とは異なる理由
看板を制作するとき一般的に言う耐用年数が気になる方もいることでしょう。看板で言う耐用年数というのは、実は看板の寿命とは異なる意味があります。
耐用年数という言葉は、高額で長期にわたり使用する固定資産の購入費用を定められた期間で分割して計上する際の期間のことを指します。
言い換えると資産価値としての寿命であり、看板自体の寿命とは異なる意味があるものです。
看板費用が10万円以上になると固定資産として決算書や申告書に資産として計上しなければならないことから、看板を制作する際に気にする方が少なくないのです。
固定資産は帳簿上では制作費用のすべてを一度に計上するのではなく、耐用年数の期間内に分割して経費として計上することができます。
多くの事業を手掛けていたり、多くの店舗を展開したりしている場合は、看板の種類ごとに耐用年数が異なるため、経費を把握するためにも重要な意味があります。
耐用年数という言葉のイメージから、看板の寿命だと勘違いしないよう注意が必要です。
国が定める【法令耐用年数】の見方
法令耐用年数は、看板を含む高額かつ長期的に使用するものに対し、決算書や申告書に資産として分割計上するものに決められている期間で、看板の場合は資産区分により法令耐用年数が定められています。
ここでは、看板の種類ごとの資産区分をチェックしていきます。
看板の資産区分と耐用年数の見方
看板は、主に設置する場所により資産区分が異なります。
看板の資産区分 | |
資産区分 | 看板の種類(設置場所) |
構築物 | ポール看板(自立看板)、塔屋(とうや)看板(屋上設置)、野立看板など土地の上に設置されている看板 |
建物付属設備 | 袖看板、突き出し看板 |
器具及び備品 | スタンド看板、電飾スタンド看板など持ち運びが可能な看板 |
これらの看板は10万円以上の購入価格のものが減価償却の対象となり、購入価格が10万円未満の看板は対象になりません。
また、令和2年より中小企業向けの特例が施行されているので、該当する場合は確認しておくと良いでしょう。
主な看板の種類別の法令耐用年数を解説
看板の種類や資産区分による法令耐用年数をチェックしていきます。自社・店舗に設置している看板の種類に該当するところを確認していきましょう。
器具及び設備に含まれるスタンド看板・電飾スタンド看板は耐用年数3年
器具及び設備に含まれるスタンド看板は、主に店先に置くA型看板や木製の手書き看板、電飾スタンド看板は店舗の入り口付近に出して使用する光るタイプの電飾看板が当てはまります。
どちらも場所を固定せずに移動できることが特徴です。これらの看板の法令耐用年数は3年と短く設定されています。
建物付属設備(金属造)に含まれる袖看板や突き出し看板は耐用年数18年
建物付属設備(金属造)に含まれる袖看板や突き出し看板は、ビルや建物の壁に突き出すように設置するタイプです。
例えば、ビルの場合だとフロアごとに店舗や会社名を表示するケースや、理容室や美容室などでも壁に設置されているケースが当てはまります。
袖看板や突き出し看板は金属で設置することが多く、この場合の法令耐用年数は18年と長めの設定になっています。
構築物(金属造)に含まれるロードサイン(自立サイン)は耐用年数20年
構築物(金属造)に含まれるロードサイン(自立サイン)は、店舗や会社の敷地内に設置されているものが当てはまります。
場合によっては新幹線や電車から見える野立看板も含まれ、この場合の法令耐用年数は20年と長く設定されています。
看板の定期メンテナンスは企業の安全性を守る意味がある
看板は、路上やドライバーから見えるため、ある程度目立つよう制作することは必須条件なのですが、そのほかにも安全性にも気を配ることが重要です。
看板は企業や店舗の顔というように、多くの人の目に触れるため、仮に落下したり折れたり、何らかの事故が遭った場合はあっという間に評判を下げてしまう可能性があるからです。
何らかの事故が起きた場合は、長年積み上げてきた信頼を失うことになりかねないことや、被害者が出たり他の建物や看板に被害が出たりした場合は、賠償金を請求されることもあるでしょう。
最悪の場合、事業や営業を続けることができなくなることもあるので、十分な対策をとることが重要です。
こうした予期せぬ事態を避けるためにも、看板は耐用年数を鵜呑みにしたり、看板自体の寿命だと思いこんだりするのではなく、定期的なメンテナンスや安全点検を行うことがマストです。
屋外に出すことが多い、もしくはサインポールのように出しっぱなしの看板は、雨や風、紫外線の影響などの影響により、接続部の腐食やゆるみ、地震などの影響で亀裂が入ることも考えられます。
そのため、見た目には美しくて問題ない看板だったとしても、定期的なメンテナンスや安全点検を行うようにしましょう。
メンテナンスの際は目視などの自己流で行うのではなく、専門業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
看板は国が定める法令耐用年数を参考に新しく作り直すことや、メンテナンスが必要だと考えることがありますが、法令耐用年数はあくまでも資産計上する上での一定期間であり、看板の寿命とは異なるものです。
つい、「耐用年数」という言葉のイメージから寿命と結びつくような気がしますが、この機会に寿命とはあまり関係ないことを理解しておきましょう。
また、看板の寿命が気になる場合は、看板を設置してから定期的にメンテナンスや安全点検を行うことが望ましく、年に1度、もしくは看板の種類に合わせた期間で専門業者に依頼するようにしましょう。
看板は、企業や店舗の顔であると同時に安全であることが前提です。集客・誘導効果に気を取られ過ぎず、お客さまが安心して見ていられるようにしたいものですね。
■参考資料:
【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(器具・備品)(その1)